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群馬大学医学部第2内科 呼吸器グループ

症例2『70歳 男性,主訴 咳嗽・喀痰・労作時呼吸困難』
【解答】びまん性汎細気管支炎

    【症例のポイント】
  • 慢性副鼻腔炎の既往
  • 多量の膿性痰を伴う呼吸困難
  • 吸気時のcrackleと呼気時のwheeze
  • 胸部レントゲンで過膨張所見とびまん性粒状影
  • 寒冷凝集素価の上昇

  • 【胸部レントゲン写真の解説】 [正面] [側面]

    【胸部CTの解説】1 2

    [問1]  胸部レントゲン写真から考えられる疾患は?
  • びまん性汎細気管支炎
  • 誤嚥性細気管支炎
  • 結核(粟粒結核,非定型抗酸菌症)
  • サルコイドーシス
  • 塵肺
  • 膠原病(慢性関節リウマチ,シェーグレン症候群など)
  • 特発性間質性肺炎
  • 肺気腫(過膨張にはなるが粒状影はない)
  • その他,HTLV-I associated bronchiolo-alveolar disorderなど.

  • [問2]  さらに必要な検査は?
    (1)血液検査
     →免疫学的検査
       寒冷凝集素価,IgA.RA因子が陽性になることもある.
    (2)喀痰培養検査
     →インフルエンザ菌,緑膿菌,抗酸菌はいないか.
    (3)画像診断
     →胸部CT

    [問3]  鑑別すべき疾患は?
     先に挙げた画像診断から疑われる疾患が鑑別の対象となる.
     びまん性汎細気管支炎の初期には,粒状影が目立たず過膨張所見のみを呈することがあり,肺気腫・慢性気管支炎や気管支喘息との鑑別が必要である.
     また,進行して気管支の拡張をきたすと気管支拡張症との鑑別が必要になる.

    [問4]  確定診断の方法は?
     従来は,病理組織学的に呼吸細気管支を中心とした細気管支炎および細気管支周囲炎の所見を得ることが診断確定に必要であった.
     しかし画像診断の進歩などから,厚生省特定疾患びまん性肺疾患調査研究班は平成7年1月にびまん性汎細気管支炎診断の手引きを改訂し,主要臨床所見から診断しうるとした.

    [問5]  どのように治療しますか?
  • 基本療法
  •  エリスロマイシンの少量長期投与が基本となる.
     エリスロマイシン600mg/日を投与する.6カ月経って治療が奏功したもの,
     逆に3カ月以上変化がみられない症例や2年以上投与した症例でそれ以上改善が認められないと判断されるものは治療終了とする.
     同じく14員環系マクロライドであるクラリスロマイシン・ロキシスロマイシンなどにも同様の効果がある.
  • 安定期の管理
  •  喀痰の体位ドレナージの指導を行う.必要があれば気管支拡張剤(テオフィリン・β2刺激薬)の投与を行う.喀痰培養でインフルエンザ菌や緑膿菌を認めるというだけでニューキノロン系抗生物質などを安易に投与すべきではない
  • 悪化時の治療
  •  喀痰ドレナージの不良や感染の合併により呼吸状態が悪化した場合には,吸入や補液を行うとともに喀痰の体位ドレナージを徹底して行う.右心不全が認められる
     場合には,補液量に注意し,必要であれば利尿剤を投与する.
     血液ガスが不良の場合は酸素を投与する.
     抗生物質は喀痰培養を行いつつ投与するが,緑膿菌に抗菌力をもつ抗生剤(第3世代セフェム剤・ニューキノロン系)を投与する

    【びまん性汎細気管支炎について】
    ・病因は不明である.
     副鼻腔炎を高率に合併すること,家族発症例が多いことから遺伝的な素因の関与が示唆されている.ことに白人にはほとんど存在しないHLA-BW54が高率に陽性であり,人種特異性の強い疾患と考えられている
    ・エリスロマイシン療法の特徴は,
      1)有効率は60〜80%と高率,
      2)エリスロマイシンに感受性をもたない緑膿菌感染例でも有効,
     とされる.
      エリスロマイシンの作用機序は抗菌作用ではなく,
      1)気道粘膜上皮における水と粘液の分泌抑制,
      2)好中球遊走因子および化学遊走能の抑制による好中球集積抑制,
      3)リンパ球の増殖抑制とマクロファージの分化成熟促進,
     などの作用によると考えられている.



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群馬大学医学部第二内科 呼吸器グループ 須賀達夫/ sugat@showa.gunma-u.ac.jp

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